Interview

武井 敦彦さん

#4武井 敦彦さん

Passion Sports Training 代表

ネバダ州立大学ラスベガス校
スポーツ傷害マネージメント学部アスレチックトレーニング学科
University of Nevada Las Vegas
BS in Sports Injury Management, Athletic Training
東京農業大学第一高校出身
NIC 第12期生

What makes you so special?

自分の
好きなことを
とことん追求して
継続し続ける。

僕にはスポーツしかない

Passion Sports Training を立ち上げ、パーソナルトレーニングを専門的な仕事にしています。実際にトレーニングを教えているスポーツの種目は、テニス、野球、ビーチサッカー、馬術など様々です。毎回、そのスポーツを専門に教えているコーチ達からお話を聞いたり、試合を見に行って勉強をしていますね。見ながらトレーニングの内容を考えるようにしている。競技によってトレーニングの方法も全然違います。例えば、馬術をしてるジュニアの子を教えているのですが、その子の場合だと、最初は馬を降りて地上で行う運動が苦手でした。でも、長い時間馬に乗っているからこそ体幹が強い。なのでその子には、脚力を上げて体幹をさらに伸ばすようなトレーニングをしています。その人にベストなトレーニングをつくっていくことが僕の仕事です。

小さい頃は、ゲームで遊ぶことよりも外で遊ぶことに夢中になっていました。その影響か、小学校ではサッカーと野球。中学校でサッカー。高校ではテニスとスポーツ漬けの毎日で、気づくと将来やりたいことがスポーツしかない状態でした。僕にはスポーツしかないんです。

武井 敦彦さん
ネバダ州立大学ラスベガス校の卒業式にて。クラスメイトのみんなと。
帰国後はビーチサッカー日本代表チームや横浜DeNAベイスターズのトレーナーとしても活躍した。© Airi Suzuki 2016

やるしかないでしょ!

ある時、アメフトの試合を見ていて、大観衆の中に走って行って選手を助けているアスレチックトレーナーの活躍に心が踊りました。かっこいいなーって。トレーナーになるにはアメリカしかないと思って、学校を探したんです。その時にたまたまパンフレットを見てNICの説明会に参加しました。その説明会でお会いした近松さんはテニスを、中山さんはスポーツトレーナーをしていたということもあり意気投合。”アツ、やるしかないでしょ!”と背中を押されてNIC入学、海外進学を決意しました。そして1年ののち、ネバダ州のTMCCにまず進学して、その後に多くの有名なスポーツ関係者を輩出しているネバダ州立大学ラスベガス校に編入しました。大学では解剖学を基礎とした、科学的に体を勉強するクラスとトレーナーとしての技術を学ぶクラスに大きく分かれていました。

トレーナーにはメディカルトレーナー(又はアスレチックトレーナーとも呼ぶ)とトレーニングコーチ(又はストレングス&コンディショニングコーチとも呼ぶ)と二種類あるんですが、最初はメディカルトレーナーになろうと思っていました。リハビリや試合中の怪我の対処などをしている、みなさんがテレビで見たことがある方達です。でも、トレーナーについて勉強するうちにトレーニングコーチの必要性が明確に見えてきたんです。例えば、正しい走り方をしていない選手はバランスを失い怪我をしやすい。まずは選手の走動作を確認、修正する事が、一番の怪我の予防だと思い、それ以来、現場でトレーニングコーチとして活動していこうと決めたんです。

武井 敦彦さん
テニス ジュニア日本代表選手のトレーニング風景。© Airi Suzuki 2016

メジャーリーグで始まった新しい人生

大学とは別にプロ野球チームの球団にインターンでトレーナーとして働いていた時の話なんですが、雑用をする事が苦手なアメリカ人のトレーナー達に代わって、治療用お風呂洗いやトレーナールームの清掃など色々な細かい雑用をしていました。僕としては当たり前のことを当たり前にしているつもりだったんですが、僕の姿を見て誰かが伝えてくれたのか、アリゾナダイヤモンドバックスというメジャーリーグの野球チームからオファーがあり、自然の流れで大学卒業後はそこにトレーナーとして就職することになりました。ダイヤモンドバックスで働いていた時、ラテン系の選手がチームの半分で、文化の違いもあり、最初は自分を無理やりチームメイトに合わせた仕事のやり方をしようとしていました。

でも途中からなにかうまくいかなくなり、言い方はおかしいですが ”日本人らしく”自分のやり方で仕事に向き合おうと思ったんです。すると周りの見る目が変わり始めました。それから、8チームある同じリーグのトレーナー達が、僕の事をベストトレーナーとして選んでくれ、表彰を受けました。この経験から僕が学んだことはきちんとやるべきことをやっていれば、国や文化関係なくみんな認めてくれるということ。どこで仕事をしようが、やるべきことをやる姿勢が大事なんだと。

武井 敦彦さん
© Airi Suzuki 2016

一生学び続けることが大事

アメリカで仕事をしていく上で、英語が母国語でないことを痛感した時は大変でした。学生の時は、英語がある程度つたなくても教授やクラスメイト、友達が汲み取ろうと努力してくれる。でも、仕事となるとそれは別。トレーナーは全員球団と1年契約なので結果を出さないと契約はそこで終わり。誰も”アメリカ人じゃないのに頑張っている”なんて見てくれない。アメリカに沢山いるトレーナーの中の1人なんです。マイナーリーグに所属していた時なんですが、選手とスタッフ合わせて35人前後のチームが遠征に行くとなると、全員分のバス移動や宿泊の手配、スケジューリング、トレーニング指導、またお給料の配布等全てトレーナーの仕事でした。英語で全部の仕事をする大変さは半端なものではなかった。でもトレーナーというお仕事はそれだけその人の人生に関わっているお仕事なんです。責任があるお仕事。これはとてつもないやりがいがあります。選手と一緒に戦っているんですから。不満を言っている暇もないほど、がむしゃらになってやっていました。

ダイヤモンドバックスヘッドアスレチックトレーナーであるケン・クレンショウさんから”選手はいつも試合でベストを出すために頑張っているのに、トレーナーも同じように勉強して知識をアップデートすることに努めないと選手に同等でものが言えなくなる。”と言われたことがあります。それ以来選手に負けないくらい勉強しているしトレーナーとして成長し続けられるように努力しています。

今の夢は、人の心を動かす選手を日本から世界に輩出していくことに従事していくことです。プロアスリートになることは、難しいです。でも長く活躍し続けることはもっと難しい。だから何事も継続することが大事。何があっても踏ん張って、節度を持って毎日しっかりやっていく。これを実行していける人が何でも実現できるんだと思う。実際お会いした選手の中で、僕の尊敬している方に、今シーズンをもって横浜DeNAベイスターズを引退された三浦大輔選手がいるんですが、彼は勝っても負けても全く同じルーティーンでトレーニングするんです。毎日。後は、中村紀洋選手。毎日、次の試合相手の投手の映像を分析し、自分のバッティングと投球のタイミングが合うまで寝ずに確認するってお話をされていました。

現在、アリゾナ州にある大学院で運動学の修士課程(MA)をオンラインで取得しているところです。今までトレーナーとして10年以上のキャリアがありますが、今まで自分が学んできて少しずつ自分流に育ててきたトレーニング方法が、選手たちにとって本当に効果があるのかを研究する事により検証していきたいんです。これからも生涯学び続けていきます。

武井 敦彦さん
© Airi Suzuki 2016